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市民記者コラム
COLUMN

真夏でも涼しい! 8千万年の時がつくり上げた自然の芸術・あぶくま洞

情報掲載日:2020.07.16 記者:福島TRIP

あぶくま洞月の世界

 

石灰岩の採掘中に発見された地底空間


田村市を代表する観光スポットといえば、滝根町にある「あぶくま洞」。鍾乳石の種類と数の多さでは東洋一とも称される日本有数の鍾乳洞です。洞内の気温は年間を通して約15℃と一定で、暑い夏のお出かけにもぴったり。そこで今回は、あぶくま洞の見どころをたっぷりご紹介します!

まず初めに、あぶくま洞の歴史&鍾乳洞の成り立ちを簡単に見ていきましょう。

あぶくま洞が発見されたのは1969年。石灰岩の採掘中のことでした。

この一帯には石灰岩でできたカルスト台地が広がっており、ここはもともと採石場でした。あぶくま洞駐車場の北側には、今も採掘跡の白い岩壁がそびえ立っています。その高さは140m。遠く離れた場所からも望め、間近で見ると圧倒されるほど巨大な岩壁です。



実はこの石灰岩こそが、あぶくま洞をつくり出したものなのです。

石灰岩の主成分は炭酸カルシウムで、酸性の水に溶ける性質があります。カルスト台地の石灰岩を弱酸性の雨水や地下水が溶かし、侵食(溶食)によって地下に空洞=洞窟ができます。そしてその洞窟の中に滴り落ちる地下水がさまざまな鐘乳石(溶けた石灰岩が再び結晶化したもの)をつくり出し、洞内を装飾していきます。こうしてできあがるのが鍾乳洞です。



鍾乳洞ができるまでには長い長い年月がかかります。あぶくま洞は、およそ8千万年という気の遠くなるような時間をかけて育まれたといわれています。8千万年前といえば、恐竜たちが地球を支配していたころです。あぶくま洞の歴史は、人類が誕生するはるか以前から始まっていたんですね。

それでは、悠久の時に思いを馳せながら神秘的かつ幻想的な地底空間へと向かいましょう。


ひんやりとした洞内を彩る多彩な鍾乳石


あぶくま洞の中に足を踏み入れると、ひんやりとした空気に包まれます。静寂の中、地下水が滴り落ちる音が響いてきて一気に非日常の世界へと誘われます。

洞内には全長600mの一般コース(所要時間約40分)と、途中で枝分かれする全長120mの探検コース(同約10分)が設けられています。探検コースは狭いところをかがんで進んだり、丸太のハシゴや飛び石を渡ったりと、その名のとおり探検気分を味わえるルート。時間や体力に合わせて、お好みのコースを選びましょう。



洞内を進んでいくと、さまざまな形の美しい鍾乳石が次々と現れます。やわらかな光に照らし出された鍾乳石は、まさに自然のアートそのもの。主な鍾乳石には「妖怪の塔」「白磁の滝」「きのこ岩」など、それぞれの特徴をとらえた名前が付けられています。


▲変化に富んだ鍾乳石が妖怪の顔のように見える「妖怪の塔」


▲流れ落ちる滝がそのまま結晶したかのような「白磁の滝」


▲「竜宮殿」内にあるキノコのような形の鍾乳石「きのこ岩」

と、ここまでざっくり「鍾乳石」と書いてきましたが、実は鍾乳石にもいろいろな種類があります。代表的なものを3つご紹介しましょう。

天井から垂れ下がる「つらら石」は、滴り落ちる水の石灰分が天井に残って大きくなったもの。地表に落ちた水の石灰分が堆積してタケノコ状に伸びたものが「石筍(せきじゅん)」。つらら石と石筍が伸びていってつながると「石柱(せきちゅう)」になります。

あぶくま洞で2番目に大きな高さ約13mのホール「竜宮殿」には、「樹氷」と「クリスマスツリー」と名付けられた巨大な鍾乳石が並んでいます。一見そっくりですが、よく見ると「樹氷」は上部のつらら石とつながっているので石柱、「クリスマスツリー」は天井に届いていないので石筍だとわかります。ぜひ現地でじっくり観察してみてくださいね。


▲上部のつらら石とつながっている巨大な石柱「樹氷」


▲天井とつながっていない石筍「クリスマスツリー」

どのタイプの鍾乳石も、1cm生長するのに70年〜100年かかるそう。「クリスマスツリー」も、何万年か後には石柱になっているかもしれませんね。


荘厳な雰囲気漂う洞内最大のホール「滝根御殿」


あぶくま洞最大の見どころが「滝根御殿」。公開部分最上層、急な階段を上った先に現れる洞内最大のホールです。高さ29mの巨大な空間は多彩な鍾乳石に彩られており、その圧倒的なスケールに言葉を失ってしまうほど。精緻な彫刻で装飾されたヨーロッパの大聖堂を彷彿とさせ、荘厳な雰囲気を漂わせています。



滝根御殿を彩る鍾乳石の一つが「クリスタルカーテン」。石灰分を含んだ水が斜めに傾いた天井に沿って流れ、幕状に結晶化した鍾乳石です。光を透かして石の模様を見ることができるほど薄く、とても珍しくて貴重なものだそう。



通常のつらら石と違って上部が円盤状になっている「洞穴(どうけつ)シールド」は、稀にしか形成されない珍しい鍾乳石。ここまで大きなものはあぶくま洞でしか見られないという貴重なものです。



他にも「ボックスワーク」「洞穴サンゴ」「ビッグフローストーン」などさまざまな鍾乳石があり、見飽きることがありません。幻想的な空間に佇み、時間が許すかぎりいつまでも眺めていたくなります。


刻々と変化する光の演出が美しい「月の世界」


見学コースのラストを飾るのが、主な鍾乳石をすべて観察できる「月の世界」。日本の鍾乳洞で初めて舞台演出用の調光システムを導入し、暗闇から朝日が昇り、夕日が沈むまでを表現しています。刻々と移り変わる光が照らし出す多彩な鍾乳石の美しさは格別です。



現在公開されているコースの奥には、2,500m以上の未公開エリアがあるのだそう。どんな世界が広がっているのか、想像するだけでワクワクしますね。

以上、駆け足で見どころを紹介してきましたが、あぶくま洞の魅力は写真では到底お伝えしきれない!というのが正直なところです。圧倒的なスケール感、自然にできたものとはにわかに信じられないような鍾乳石の造形美、大自然の神秘とロマン。ぜひ足を運んで、8千万年という時間がつくり上げた芸術を体験・体感してみてくださいね。


あぶくま洞
住所:福島県田村市滝根町菅谷東釜山1
電話:0247-78-2125(あぶくま洞管理事務所)
営業時間:8:30~17:00(6/24~9/30は17:30まで。11/16~3/6は16:30まで。探検コースの受付は営業終了1時間30分前まで)
定休日:年中無休
入場料:高校生以上1,200円、中学生800円、小学生600円(探検コースは各200円追加)、小学生未満無料
駐車場:700台
HP:https://abukumado.com

 

written by 福島TRIP ライター/ごっちー

あぶくま洞月の世界

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